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鼠径(そけい)ヘルニアとは

私たちの病院で最近行っている腹腔鏡による虫垂炎の手術方法

図 1. 足の付け根であるそけい部に、腸などのお腹の臓器の一部が飛び出しぽこっと膨れる病気です。

私たちの病院で最近行っている腹腔鏡による虫垂炎の手術方法

図 3. 卵巣がとびでている左鼠径ヘルニアの女の子の例
卵巣がとびでていると、卵巣が外からの刺激で簡単に傷ついたり、捻じれたりする可能性があるので早めに手術することをお奨めします

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図 2. そけいヘルニアのなり方

足の付け根であるそけい部に、腸などのお腹の臓器の一部が飛び出しぽこっと膨れる病気(図1.)です 。 お母さんのお腹の中にいる間に、男の子の場合は精巣が陰嚢(いんのう)内に降りてくるため、お腹の臓器を包む膜(腹膜)が引っ張られて袋状になります。女の子の場合も、ヌック管と呼ばれる管が降りてきて、腹膜が足の付け根に沿って袋状に引っ張られます。通常この袋はお母さんのお腹の中にいる間に自然に閉じますが、袋が閉じないまま生まれてくる場合があります。お子さまが泣いたりいきんだりしてお腹に力がかかると、腸や(女の子の場合は)卵巣(図 3.)がこの袋にはまり込んでしまい、ヘルニアと呼ばれる状態になります。 子供の20人から30人に1人がそけいヘルニアになると言われています。決して珍しい病気ではありません。

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図 4. お腹から陰嚢にのびる袋の入り口を糸で縛り、お腹の臓器が飛び出してこないように手術します。

生まれてから数ヶ月くらいたつと、自然に袋が閉じて治るお子さまもいますが、手術(図4.)が必要となるお子さまが多いのが実情です。残念ながら薬での治療は出来ません。

1歳以下のお子さまでは、足の付け根の袋の中に腸がはまりこんで抜けなくなってしまうこと(嵌頓 かんとん)(図 5.)があります。 そのままにしているとはまりこんだ腸の血流が悪くなり、腸が腐ってしまう可能性があるため、緊急で手術をしなくてはなりません。そのような状態を防ぐために、生まれてから数ヶ月たっても自然に治らない場合は 手術をして治すことをおすすめしています。

図5. とび出した腸などの臓器が、せまい袋にはまり込むと臓器がむくみ、血流が悪くなり、お腹の中に元に戻すことが難しくなります(嵌頓)。ぽこっと膨れた皮膚は硬く青黒くなり、お子さまは不機嫌になり、腹痛、嘔吐、痛みなどの症状がでます。膨れた部分を戻せないと、はまり込んだ臓器の血流が悪くなり壊死してしまうので緊急手術が必要になります。上記のような症状がある際は急いで病院を受診しましょう。
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図5. 嵌頓 かんとん

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最新の腹腔鏡手術(SILPEC: Single Incision Laparoscopic Percutaneous Extraperitoneal Closure)

私たちの病院で最近行っている腹腔鏡による虫垂炎の手術方法

図 6. 従来の手術方法 ぽこっと膨れている足の付け根を、約2cmくらい切って、腸が飛び出ている袋の出入り口を糸で縛ります。

私たちの病院で最近行っている腹腔鏡による虫垂炎の手術方法

図 7-1. 腹腔鏡によるお臍の傷だけの手術
a.お臍のしわにおさまるように切って、腹腔鏡のカメラを入れて除きながら手術をします。
b.ぷくっと膨れるところの近くに糸をつけた針をさします。採血の時と同じ針の太さですので傷痕として残りません。
c.手術の後の傷はお臍にしわに隠れほとんど目立たず、傷の残らない手術が可能です。

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図 7-2 お腹の中からヘルニアを観察したところ
左:トンネル状のくぼみが、腸などのお腹の臓器が飛び出てしまう袋の出入り口です。
真ん中:体の外から糸つけた針で穴の周りを一周した後、縛って袋の出入り口を閉じます。
右:通常は、お母さんのおなかの中にいる間に袋の出入り口は自然に閉じているのでヘルニアにはなりません。

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図8. 小さなお子さまの場合は、臍ヘルニア(でべそ)も合併していることがあります。 腹腔鏡によるヘルニアの手術の際にお臍の形成を同時に行い、治すことができます。

以前は足の付け根の膨らんでいるところを切って手術する方法(図6.)しかありませんでしたが、最近では腹腔鏡手術(図7.)が行われるようになってきました。腹腔鏡手術の中でも、私達が開発した単孔式(たんこうしき)と言われるお臍の傷からだけで手術する方法であれば、傷がお臍のしわに隠れてほぼ傷を残さずに治すことが可能です(図 9.)。当院では臍ヘルニア(いわゆるでべそ)(図8.)のお子さまの手術も行っておりますので、こうした技術を生かし腹腔鏡手術の際のお臍の傷もきれいに治すことが可能です。

そして腹腔鏡手術のもう一つの利点は、左右両側のヘルニアともお臍の傷だけで同時に治すことが可能であるということです。左右どちらか片方のヘルニアになったお子さまの約5-10%が、その後に反対側の付け根も膨れてきて、両側のヘルニアになることが知られています。しかし、今までのヘルニアの手術方法(足の付け根を切る方法)では飛び出してきた方だけを切る方法のため、反対側がヘルニアになった時は、もう一度新たな傷をつけて手術を行わなければなりませんでした。私たちの病院で行っている腹腔鏡による手術ですと、最初の片側の手術の際に、お臍からいれたカメラを用いて反対側が将来ヘルニアになるかどうか観察することができます。手術時に、反対側の足の付け根が膨れるなどの症状がなくても、鼠径部に向かって袋が飛び出している場合は予防的に反対側のヘルニアも同時に治すことができます。手術後に反対側のヘルニアになる心配がなくなり、一回の手術で、お臍に隠れる傷一つだけで両側とも完全に治すことできます。まさにお子さまの体への負担が少なく、傷あとの目立たない手術といえます。

  従来のそけい部を切る方法 お臍の傷だけの腹腔鏡
1か所足の付け根に2cmくらい お臍の皺に隠れる傷1か所のみ
反対側のヘルニアの確認 できない 予防的に同時に手術できる
卵巣、子宮の確認(女の子の場合) できない できる
合併症 変わりない
再発率 変わりない
入院期間 2泊3日 2泊3日

表1. 手術方法の比較

また、女の子の場合、アンドロゲン不応症(男性染色体をもって生まれたものの男性ホルモンを感知しないため女性の体型となる)が背景にあることがあるので、腹腔鏡手術でお腹の中を観察し子宮と卵巣を確認することが大切です(表1)。

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そけいヘルニアの実際の手術方法

手術に伴う合併症(手術によって起きる可能性のあるリスク)

私たちは常に安全第一に手術を行っておりますが、合併症はゼロではありません。 今まで当院では経験したことがない合併症も含めて、一般的なヘルニア根治術のリスクとしては、以下のものが知られています。

  • 手術をしてもまた足の付け根が膨らみ、再発してしまう
  • 袋に飛び出たお腹の臓器(腸、卵巣など)を傷つけてしまう
  • お腹の中の他の臓器(膀胱、精子の通り道である精管)などを傷つけてしまう
  • お臍の傷が膿んでしまう
  • 術中に出血する

その他、予期せぬことが起こる可能性もゼロではありませんが、何か問題が起きた場合はすぐに説明をし、対処をさせて頂きます。

当院でのそけいヘルニアの手術とその成績

今までに腹腔鏡によるそけいヘルニアの手術を2007年から現在までに900例程行ってきました。そのうち最近の約600例は、お臍の傷だけで手術を行う単孔式腹腔鏡手術です。
当院での腹腔鏡手術後に再発した方は2例でした。
今までに腸や卵巣、膀胱、精巣を傷つけたことはありません。
お臍の傷が術後に感染した症例は3例でした。 術中の出血はほとんどが少量ですが、圧迫止血を行った症例は2例あり、それらの出血量もごく少量でした。

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実際のそけいヘルニアの治療の流れ

外来

お気軽にご相談ください。診察を行い、今後の治療の必要性などを検討します。
手術をすることになったら、手術日を相談します。

術前検査外来 (毎週水曜日の午後)

手術日が決定したら、手術1週間前に外来にいらしていただきます。
手術が安全に行えるか、問診や検査(採血、心電図、レントゲン)を行います

入院

比較的短時間の手術であり、麻酔から覚めたら通常通りの生活が可能ですので、日帰りで手術を行っている施設もあります。当センターでは、手術前後も入院にてしっかり経過をみられるように、「手術前日に入院、術後翌日に退院」の二泊三日の入院期間としております。入院中は、看護師の他、お子さまの入院生活をサポートする保育士もおります。付き添いがご希望の方には個室をご用意致します。

手術前日の夕食は召し上がれますが、当日の朝は水分のみです。手術後は、3時間後から歩いたり、水を飲んだりすることができます。手術後は手術当日の夕食から食事を召し上がっていただくことができます。

手術翌日に退院となります。お臍の傷の消毒をする必要はなく、1週間後の術後外来までテープを貼ったままにしてください。テープを貼ったままシャワー浴ができます。食事制限などは特にありません。運動制限については主治医とご相談頂き、お子さまの体調にあわせて通園や通学は可能です。

術後外来

退院1週間後に外来にお越しいただきます、お傷の確認をし、術後の経過をみさせていただきます。お傷が問題なければお風呂やプールに入れるようになります。経過が問題なければ、その後の外来通院は必要ありませんが、術後、心配な症状がおありの際は、いつでもご相談ください。 術後翌日に退院ができなかったお子さまはいらっしゃいません。

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そけいヘルニアの手術費用について

手術費用は、育成医療の対象となります。育成医療については総合受付で説明をいたします。育成医療の対象となると、入院費の上限は約1万円にプラス食事代(約千円)、傷のテープ代となります。
お住まいになっているところにお子様を対象に医療費助成金の助成がありますので、是非ご活用下さい。
高額療養費制度があります。年額の医療費が高額になったとき、申請をすると補助がでることになっています。

手術費用の概算(育成医療の対象とならない場合、高額療養費制度使用時には変わります。)

  • 開腹術 3歳未満 7~8万円
  • 3歳以上 9~10万円
  • 腹腔鏡 9~10万円
  • 詳細は病院受付の方にお問い合わせください。

例 さいたま市の場合  ≪子育て支援医療費助成金の助成について≫
さいたま市では子育て支援の観点から、下記のお子様の医療費を助成しています。

【対 象 者】
さいたま市にお住まいで、健康保険に加入している乳幼児・児童。
【助成内容】
通院、入院の医療費の全額(保険診療一部負担金)と、入院時の食事療養標準負担額の1/2。(市外の医療機関で受診した等、窓口で医療費を払われた場合は、高額療養費を差し引いた額を助成いたします。)
【登録方法】
  ・対象乳幼児・児童の健康保険証、または健康保険証に代わる証明書 ・印鑑(朱肉が使えるものであれば、認印可) ・金融機関の普通預金通帳上記3点を持参のうえ、さいたま市内各区役所保険年金課福祉医療係にて受給資格登録手続きを行ってください。
【登録が済んだら】受給資格証を交付します。あわせて区役所保険年金課窓口で「子育て支援医療費助成制度をご利用になる前に」をお受け取りになり、ご一読のうえ、本制度をご利用ください。

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